昔話のイメージ2
小澤俊夫 編著
A5版、164頁
定価:1,680円(本体1,600円+税)

彼岸のきまりごと(抜粋)
 私は本論において、彼岸に存在するらしいきまりを中心に置いて調べてみたい。この問題については、私は既に「昔話の彼岸イメージ」なる論文において日本昔話の場合を調べてみたことがある。それと対比しつつ考察すると、それぞれの特徴の一端を明らかにすることができるのではないかと思う。(中略)
 日本昔話との比較の上で結論をまとめると、本論で扱ったドイツ語圏のメルヒェンでは、彼岸と此岸との関係はきれいに整理されていて、日本の場合のように多種多様な関係ではないことがわかる。日本昔話の場合には、此岸世界のまわりには至る所に彼岸世界がひろがっていて、どこへ行ってもそれにぶつかるという雰囲気がある。逆にいえば此岸世界は彼岸世界のまっただ中に浮遊しているとさえいえる。それに対してメルヒェンの場合には、彼岸世界と此岸世界が二項対立的に対置されている感がある。白と黒で明確に分割されているような感じがする。
 このことは、メルヒェンがキリスト教ヨーロッパで成育してきたことと深く関係があるものと考えられる。それに対して日本昔話には自然神にとり囲まれてきた人びとの生活が色濃く反映していると考えられる。                小澤俊夫

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